諭吉佳作/menたち

書きたいことを書きたいように書くかもしれないし書かないかもしれません

でん、

電車が止まっている、

 

 

   他の客も周りの広告もまったく目に入らないほどドアに近付き、わたしはなんとかこの寂しさをポジティブに思おうとして、キーボードを打ち始めた。

到達できない可能性ある/行き先を変更する場合がある

    そうですか……まさか、こんなことになっているとは思わなかった。

    停車している間、ただぼーっとしていればよいので、その"待ち"をそれほど苦痛に思うわけでもないが、何に腹が立つかと言うと、止まっている電車を見て何も思わなかったことについてだ。

    乗り込む時、まだ発車予定時刻まではだいぶ時間があって、「だから発車まで停車してるんだよな、そりゃ停車してるよな、発車時刻まで時間があるから、停車してるよな」と思って、乗り込み、空いている席があったのに、ドアの際の際を陣取り、あくまでそこまでは電車に1人で乗り込むスタイリッシュな人間として、息を吸っていた。あの時既にこの電車の遅延は決まっていたはずで、じゃあ、なんで誰も教えてくれなかったんだろう!

    わかっていたら、確実に座っていた。わたしには体力がないので、すぐに疲れる。

    しかも、大雨の影響で、だなんて言うが、こっちでは一滴だって降っていない。もちろんこの先の駅では違うというのはわかるが、わかりやすく理由を示してもらえないと、怒りたくなってしまうのだ。

あ、LINEが来た

ほっとする。他者の介入。

    -アナウンス-

    アナウンスによると、途中駅まで運転を再開するらしい。しかしその先はどうなるかわからないとのことだ。恐ろしい文章だ。

ウワッやばいLINEが来た!周りの乗客にニヤニヤを見られたらまた引かれてしまう!

ううん、きっとそのために際に乗ったんです……

 

そして今わたしが何に一番腹を立てているか。電車の中で暇だったからと言って、わざわざ腹を立てているふりをして、こんな文章を書いていることだ。別に電車が止まっていても、本当は、そんなに、何も、思わない。座れなくても疲れるだけで、まあそんなには……

    わざわざ頑張って怒って暇つぶしをするのはちょっと疲れるので、中断します。

 

    途中駅に到着。わたしの目的はまだまだなんですが……

あ、この駅、雨降ってる

 

22時49分〜の追記

    新しいアナウンスがあるたびに、その進展の皆無により危機を感じた人々がぼつぼつと電車を降りていく。ここまで発車を待ち続けた電車を降りるのは、どんな気持ちだろうか……。かくいうわたしは、「立ちでがちがちになった腰を車内でほぐせます」くらいの隙間ができてきたことに喜びを見出そうと、頑張っていた。

    わたしは腰を折り曲げた。それはただ痛む腰を柔らかくしようとたのでもあり、そしてこの世にあり得るすべての安寧を祈ったのでもあった。流石に本格的に疲れてきた。

    電車は微動だにしない。これは比喩だ。「微動」は、確実にしている。空調だって照明だって、全部微動だ。ただそもそもこの微動だって、意味があるのかないのか、わからない。この際、車内の照明が消えていても……それは流石に我々の不安を煽り過ぎるか。

    だんだんと降りていく人々が、「真実を知る者」に見えてくる。我々(電車に乗り続けるわたしと周りの乗客を勝手に一括りにする)は善人が故に悪をも信じ続ける愚かな民衆で……あ、わたしの後ろにいらした方が、離脱者により空いた広いスペースへ移動したので、わたしはしゃがんでのストレッチが可能になりました。

 

急に画面が消えて恐怖しましたが、家族からの着信とわかり、でしたから、ホームへ降りました。

 

    あ!わたしが立っていたスペース、電話している間に、とられてしまいました。しかし家族が向かってきてくれているそうだ。ありがたすぎる。

 

-アナウンス-

    アナウンスによると、線路点検をしているらしい。運転再開見込み、相当遅い。しかし、その点検が行われなかったらもっとひどいことに……ありがとうございます。ご苦労様ですわ、こんな遅くまでいらいらした客に優しくアナウンスしてくださって。優しい声に安心する。しかしこの安心は家族が迎えにくるという自信や余裕からきているものだろう……あ、前の人が降りた。

    家族が迎えに来てくださるらしいから、わたしはきっとこの電車を降りればいいのだろう。なんか、降りられない。

 

23時18分〜の追記

   家族と連絡し、車両を降りることにした。わたしのいる駅に着いたそうだ。

    もしも家族が飲酒していたら、iPhoneの充電が切れていたら、とんでもない恐怖感だっただろう。本当にありがたかった。たまたまの状況に恵まれた。

   ホームを出る階段にも、絶望的だという体勢で座っている人が複数いた。その間を、少しの罪悪感を感じながら通り、改札を出て、迎えの車に乗り込んだ。

 

    ワイパーが雨を跳ね除ける。なんだかわたしは急にいろんなことに感謝をした。